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物流業界とは
物流業界の仕事は簡単に言うと「モノを運ぶこと」である。私たちが毎日のように使っている商品が誕生して手元に届くまでの過程を遡ってみると、原材料の仕入れ、メーカーで商品の生産、小売店での販売等たくさんのステップを踏んでいることがわかる。しかしこれらのステップは異なる場所で行われる場合が多い。誰かがモノを必要な時に、必要な場所へ、必要な分だけ運ぶことが求められるのだ。この役割を担っているのが物流業界である。私たちは日ごろ生活をしている中で「物流業界」を意識することはそう多くはないかもしれないが、物流業界は全ての業界のモノの流れを支えている。物流企業がモノを運ぶ役割を担うことで、メーカーはメーカーの、小売店は小売店の最もこだわりをもってやりたい仕事に集中し、サービスや商品の質を高めることができるのだ。
ヒカリ産業という会社
▲西大寺物流センター
ヒカリ産業は「より確実に、より安全に、よりスピーディに」を基本理念として岡山を拠点に物流サービスを提供する企業である。トラックを使った運送業務だけでなく商品の保管・管理、仕分けといった倉庫業務も請け負っている。顧客は私たちのような個人ではなく、メーカーや小売店などの企業なので、あまりその名を耳にする機会はないかもしれない。しかし2015年で創業37年目、ヒカリグループ全体で年商100億達成間近で、岡山の物流業界上位を目指し、今後ますます拡大していこうとしている企業である。「我々の仕事は、企業と企業の間をつなぐ“架け橋”のようなもの。」と、妹尾さんは言う。
中小企業だからできること
ネームバリューでは大手が有利。しかし中小企業だからこそできるサービス、仕事のやりがいというものがある。その一つが「仕事における判断のスピード」。大手企業は組織が大きい分一つの物事を決めるのに時間がかかりがちだが、中小企業、特にヒカリ産業は社長と社員同士の距離が近く、素早い判断ができるという。社員やお客様が本当に困っている時、スピーディな判断ができる体制はヒカリ産業の大きな強みであろう。
また中小企業の面白味の一つとして、企業内で様々な仕事を経験できるというものがある。大手企業は組織として大きなサービスを提供する分、一人が担当する部分は全体のごく一部であることが多いが、中小企業であるヒカリ産業は規模が小さいので各々が担当する仕事が会社の運営に大きな影響を与える。自分の通常の担当範囲を超えて仕事を任せられることもあり、その度に新たな価値観に出会ったり刺激を受けたりするという。
ドライバーがいない?
▲ドライバー
ヒカリ産業が抱える最大の課題、それはドライバーの不足である。実は現在、ヒカリ産業に限らず物流業界全体が人不足で悩んでいるという現実がある。原因の一つは平成19年6月の免許制度の改正にある。現在の免許制度では、普通車の免許を取得した後、中型の免許を取得するまでに2年、大型は3年期間を空けなければならない。つまり、例えば高校生が卒業して普通車の免許を取得したとしてもすぐにはトラックに乗ることができないということだ。
また物流業界のイメージもドライバー不足に影響していると妹尾さんは言う。「せっかくお金をかけて大学まで行かせたのにトラックに乗るのか。」と思われる親御さんは依然として多く、大卒でドライバーを希望する学生はほとんどいないという。このような事情から、大学生を採用する際は営業職か事務職が中心となるらしい。
このような課題に対しヒカリ産業では、免許取得の際にかかる費用を会社が負担するといった制度を実施し、ドライバーの育成・サポートに尽力している。物流の要、ドライバーのイメージアップへの挑戦は続く。
営業マンの秘密
「営業マン」という言葉を聞いて、何を思い浮かべるだろうか。自社の商品やサービスの特徴を魅力的に顧客に伝え、契約に結び付ける人。そんなイメージをお持ちの方も多いだろう。しかしヒカリ産業の営業マンは一味違う。そもそも物流企業の営業というのは、「当社は物流企業でいろいろな荷物を運べます。お宅の荷物を運びましょうか?」と言って仕事が入ってくるものではない。お客様との長年の取引やお付き合いの中で入ってくる「今東京に荷物があって、岡山に運びたいんですけど、ヒカリ産業さんお願いできますか?」といったお問い合わせに答えていく、という業務が中心となるそうだ。
お客様から依頼が入った時、ほとんどの場合は承諾の是非を即答することはできない。
なぜなら通常、実際のモノの流れや工場の動き、商品の数、トラックの規模とその駐車スペース、現場入りの際のルートや配送の手順など、複数の行程をシミュレーションして、やっと引き受けられるかどうかの判断ができるからだ。このシミュレーションを丁寧に行うことが、お客様の要望を満たす物流を約束できるかどうかの鍵となる。
しかし、現場でお客様と話をする営業の中には、依頼に即答できるバリバリの社員もいる。その営業マンはお客様から依頼が入ると、瞬時に配達のルート、所要時間、高速道路の料金などを見積もり、対応できるという。日本全国の地理、地名、交通情報が全て頭の中に入っていて、依頼内容を聞けば荷物を運ぶルートが頭の中に思い描けるというのだ。常にスピーディで的確な判断が要求される営業マン、なぜそのような質の高いサービスが提供できるのだろうか?お客様のニーズにこたえられる秘密は、ドライバー時代の経験にあった。
妹尾さんが「バリバリの営業マン」と呼ぶ人の中には、実は営業担当になる前にドライバーを経験したことがある人が多い。自分がトラックに乗って実際に配達した経験があるから、「東京から岡山まで」といった全国区で依頼を受けても次から次へと地名が出てくる。経験に基づいた信頼性の高いサービスを提供することができるのだ。ドライバーのイメージアップが叫ばれる中、華々しく活躍するバリバリの営業マンは元ドライバーだった。
ヒカリ産業のこだわりオフィス
▲西大寺物流センター内のデザイナーズオフィス
ヒカリ産業の幕開けは社長夫婦2人で始めた牛乳宅配事業だった。起業のきっかけは知人の勧めとアドバイス。その後もたくさんの良き御縁・出会いに恵まれヒカリグループは今日まで成長してきたという。だからこそ、「人を大切にする」空気がヒカリグループにはあふれている。特徴的なのはヒカリ産業のオフィス。初めて訪問した人は誰もが驚くというこのモダンなデザイナーズオフィスは、大きな窓から日差しが入り、清潔で解放感にあふれている。社長自ら一つひとつ選んだというインテリアからもこだわりがうかがえる。よく言われる物流企業の3K(汚い、きつい、暗い)というイメージからはかけ離れたものだ。そもそも運送業はモノを決められた場所に取りに行き、決められた場所に運ぶことが仕事であり、事務所はトラックの駐車場と電話受けができるプレハブがあれば十分機能する。ヒカリ産業もかつてはプレハブを事務所としていた頃があった。しかしある出来事をきっかけに、ヒカリ産業の事務所は大きく変化することとなる。それは創業から数年が経過したある日のことだった。事業を大きくするために大学生を採用することを決定した社長は、学生が採用の面接に来るのを待っていた。事務所の窓から外を見ていると学生が現れる。「あー!学生さん来たなあ!」と喜んだのもつかの間、学生は敷地に入ってプレハブの事務所を見るなり、プイっと背を向けて帰ってしまった。これではいけない。たとえ物流企業で事務所なんて直接利益には関係なかったとしても、職場環境を整えることにお金をかけなければ良い人を採用できない。働く人を大切にするという社長の姿勢が、訪問者を驚かす程のこだわりのオフィスを生んだ。それだけではない。綺麗なオフィスで働くことで、社員がヒカリ産業に勤めること、物流という仕事に携わることを誇りに思えるような会社にしたい。そんな社長の願いが、こだわりのオフィスには込められている。
ヒカリ産業が大切にしているもの
ヒカリ産業がお客様との信頼関係を築くために日ごろから徹底していることがある。それが、「挨拶、服装、掃除」。当たり前のことを当たり前にすることの難しさを噛み締める。この3つを日々意識していくことが、人を大切にする上では大変重要なようだ。
「荷物と一緒に運ぶのは信頼関係」。ヒカリ産業のキャッチコピーである。お客様が必要な時に、必要なモノを、必要なだけ運ぶこと。いくら急いでいたとしても、安全のため交通ルールは必ず守ること。ドライバーが確実に指定時間に配達できるように倉庫の仕分け方法を工夫すること。物流の全てのステップで、考えの中心にあるのは「人」だった。ただモノを運べば良いのではない。本気でモノを作った人がいて、それを必要としている人が待っている。その想いを全て引き受けて、人と人をつなぐ仕事がヒカリ産業の仕事である。まだまだ発展途上のヒカリ産業、自分たちの手で会社を作っていく、そんな夢を妹尾さんは語った。
インタビュアーから
物流企業がどのような仕事をしているのか、どのような思いで日々の業務にあたっているのかを知ることができました。私たちの身の回りにある商品は、たくさんの人の出会いの中で生まれ、運ばれ、私たちのもとに届きます。一つの商品には、目に見えないけれど数えきれないほどの人の人生が関わっているのだと思います。ヒカリ産業の社是「出会いと和」。人と人とのつながりの中で社会は動き、私たちは生きているのだと感じました。