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公協産業株式会社とは
公協産業は「美しい地球の未来を考える」というテーマのもと、産業廃棄物(中でも、廃油や、廃水、汚泥、廃プラスチックなど)を収集し、自社工場で再資源化している会社だ。中四国を中心に、遠くは茨城県まで収集、運搬を行っている。創業は、まだ、エコという言葉が生まれていない、1973年。廃油を回収して精製し、燃料として販売するという事業から始まった。創業者であり現会長の國廣会長が、「もっと地球のために、もっと環境のために」、と廃棄物を原料と捉え、取り扱う廃棄物の種類を増やし、再資源化することで環境に貢献するにつれて会社は成長していった。
優良産業廃棄物処理業者
産業廃棄物とは、企業の生産活動から生じる不要物のことで、廃油、汚泥、燃え殻、廃アルカリ、廃プラスチック、廃酸など、様々な種類がある。廃棄物処理には、廃棄物処理法という法律があり、一般市民が安心安全に生活できるようにするために制定されている。処理には、廃油、汚泥などの品目ごとに許可が必要で、処理だけでなく、産業廃棄物を運ぶことにもまた別の許可が必要だ。

廃棄物処理の責任は、廃棄物を出した事業者が廃棄物を運搬する業者に渡した時に、運搬業者に責任が移ると思ってしまうかもしれないが、廃棄物処理法の考え方は、「排出事業者責任」という廃棄物を出した人が処理をしなさい、というものだ。廃棄物の不法投棄が報道されることがあるが、廃棄物業者による不法投棄があるのも現実。不法投棄されていた場合、責任は廃棄物業者だけではなく、排出事業者に大きくかかってくる。そのため、排出事業者は、信頼のおける産業廃棄物処理業者に運搬、処理を依頼したいと考える。そこで有効なのが、「優良産業廃棄物処理業者認定制度」だ。

優良産業廃棄物処理業者として認定されるためには、厳しい基準をクリアしなければならない。その基準は大きく分けて5つある。

1.5年以上産業廃棄物処理業を営んでいて、法令を遵守していること
2.処理状況や維持管理をインターネットで公表し、所定の頻度で更新していること
3.ISO14001やエコアクションの認証を受けており、環境に配慮していること
4.電子マニフェストシステムを利用できること
5.財務状況を公開しており、赤字ではないこと

4.のマニフェストとは、政権公約のことではない。産業廃棄物管理票というもので、事業者から出された産業廃棄物に関する記録を取るものだ。産業廃棄物の名称、運搬業者名、処分業者名、取扱上の注意などが分かるものだ。複写式マニフェスト(紙マニフェスト)に加え、現在では、電子情報を活用する電子マニフェストが導入されている。公協産業ではこれらのマニフェストに加え、GPSで運搬車両が産業廃棄物を積んでから、どの道を通り、公協産業の処理工場に帰ってきたのか分かるようにしている。
美しい地球の未来を考える
公協産業の仕事を一言で言うと、「循環型社会システムづくりの会社」だ。具体的には産業廃棄物の収集、運搬、再資源化だ。

産業廃棄物と言えば、一般的に目にするのは、運んでいるところで、その後は、燃やされるか、埋められるかぐらいしか想像されない。しかし、公協産業が取り組んでいるのは、集めた産業廃棄物の再資源化だ。もちろん、すべての産業廃棄物がリサイクルできるわけではなく、焼却処分や埋め立て処分をするものもある。再資源化できる廃棄物を少しでも増やせるように取り組んでいるのが公協産業なのである。

公協産業が収集し、再資源化しているものの中に、飲食店からでた食用油がある。

一昔前は、使用済み油は流し台に捨てていたかもしれないが、そうすると、下水から川に流れ、川が汚染され、そこに棲む魚は病気になり、食物連鎖でその魚を自分たち人間が食べることになるので、油は流しに捨てないで、固めて可燃ごみとして出そうという流れがあった。油を固めて可燃ごみとして出すと、このごみ自体が燃えるので、可燃ごみを焼却処分するときに必要な重油の量を減らせるのだ。

流してしまえば害しかないので可燃ごみとして処分するようになったが、この使用済み油も資源の一つだ。燃やしてしまったらそこで終わりで、そこには人々の税金が掛かっている。

そこで、この資源をもう一度燃料として使おうというのが公協産業の取り組みで、使用済み食用油を用いて自社工場でバイオディーゼル燃料を作っている。公協産業の一部のトラックはこのバイオディーゼル燃料で走っているそうだ。

▲バイオディーゼル燃料をつくるプラント

▲バイオディーゼル燃料で動く作業車両

再資源化の提案で喜ばれる
▲バイオディーゼル燃料製品とテンプラ油
再資源化している油は、食用油だけではない。たくさんの種類の廃油を扱っているが、すべての油が同じようにバイオディーゼル燃料となるのではなく、収集してきた廃油や廃水を混ぜ合わせて新たな燃料を作り、販売もしている。公協産業は処理費をお客様からもらって、作った製品をまた売ることができる。また、循環型社会システムをつくる会社として、油と水を混ぜることで、もう一度資源として使えるので、混ぜ合わせて、代替燃料を作っているのだ。

ここで気になるのが、油と水を混ぜ合わせるということだが、普通に考えると油と水は混ざらない。そこには公協産業が自ら生み出した技術が使われているのだそうだ。

他にも汚泥は、自社工場にサンプルを持ち帰り分析してみると、金やプラチナ、銅、ニッケルなどが含まれていることがあるそうだ。お客様は今まで高い処理費を払って処分していたのだが、公協産業のもつ技術により、金属を抽出し、その金属を売ることで、処理費を削減するどころか、廃棄物を買い取ってもらえるようになった例もあり、大変喜ばれたそうだ。

このように油と水を混ぜ合わせたり、廃棄物に含まれているものを分析し、抽出したりと、公協産業の持つ技術のレベルは高く、幅広い。このことから、今では全国各地の企業から、自社の廃棄物をなんとか再資源化できないかと問い合わせが多く寄せられるそうだ。
新聞の求人広告を見て入社した社長
現社長の小川大志社長は、創業者一族ではない。新聞に掲載された求人広告を見て、前職でタンクローリーの運転手をしていたこともあり、そこでの経験が生かせると思い、産業廃棄物を回収するタンクローリーの運転手として入社した。

公協産業に入社したとき、小川社長は「使うより、使われる方が楽」と考えて働いていたそうだ。というのも前職の運送会社で、運転手として働いていたとき、途中から運行管理を任されるようになったのだが、まだ若く、経験も浅いことから、運転手がなかなか言うことを聞いてくれず、その環境に挫折したからだそうだ。そこで、「言われたことだけをやる人間になろう」と心に決め、働いていたそうだ。しかし、当時は運行管理者はおらず、依頼のあった仕事は車両の空き状況などに関係なく受注し、どうしても現場に無理が生じる時があった。その後、会社の全体会議で当時物流部員であった小川社長は当時の國廣社長(現会長)へ「仕事の無理、無駄、ムラを無くし、お客様に満足して頂く、そして安全に運搬業務を行うには、運行管理者を置くべき」と発言したところ、國廣社長は即答で「では君がやってみろ」と言い、言われたことだけをやる立場から、指示をする立場に変わった重要な分岐点であったと小川社長は言う。

数年後、物流課長に昇進した小川社長が目指したのは事故を無くしていくだけでなく、働きやすい職場作りであった。100している仕事を80、70に減らして休むのは誰にでもできること。100の仕事は変えずに運転手が早く帰れて、休みも取れることを目指して改善を進めていたのだが、初めは「若いやつが、何空回りしているんだ」と言われることもあった。しかし次第にその改善のおかげで部下たちも休めるようになってきたことを実感し、話を聞いてくれる人が多くなっていったそうだ。
その頑張りも認められ、小川社長は現在は公協産業株式会社だけでなく、グループ会社の公協石油化学株式会社の社長も兼任している。
福島の復興の力に
▲フレコンバッグ
公協産業は東ヨーロッパのベラルーシのポリマスター社と共同でフレコンバッグ専用ガンマ線測定器を作った。

小川社長は2011年ごろ、ベラルーシに視察に行った。ベラルーシはチェルノブイリ原発の事故の際、風下で放射能の被害を受けた国で、放射線測定技術はレベルが高い。

小川社長がベラルーシを訪れたのは、東日本大震災が起きたころ。福島県の復興には、フレコンバッグごと放射能の測定ができるものが役に立つという話を公協産業の顧問であり、日本土壌協会の会長から聞いていたそうだ。公協産業は「美しい地球の未来を考える」という方針の会社だということもあり、このベラルーシの放射線測定器メーカーのうち世界で業界シェア3位のメーカーのポリマスター社と共同でフレコンバッグごと放射線量を測ることのできる測定器を作った。

福島県以外の土地では災害廃棄物の処理は終わったのだが、福島県のものは放射線量が高くて動かすことができず、放射線量が高いもの、低いもの、ないもの、全部がまとめられて一袋になっている。ごみは分別しないと処分できないのだが、この袋を開けて線量を測りながら分別をしていると、放射線を浴びてしまうリスクが高い。よって、このフレコンバッグごと測定できる測定器は大きな役割を担うのだ。
これからの公協産業
再資源化できる産業廃棄物を多く排出するのは、日本のものづくりを支えるメーカーの工場なのだが、今まで国内で製造していたメーカーも現在では人件費の安いアジアに工場を移動したため、国内の産業廃棄物の総量が少なくなっている。それにより、今まではライバルが県内の業者だったものが、県外の業者とも競わなくてはならない状況になってきている。岡山という土地は、四国の玄関口でもあり、関西も近く、高速道路も整備されており、他県から来やすいのだ。そこで小川社長が社員に言うのは「単価だけの営業はするな」ということだ。「現場は技術力、営業は営業力で、お客様が困ったときに、当社に電話をしようと思ってもらえる付き合い方をしなさい」と日々、伝えているそうだ。

また、「今後は技術力で勝負をしたい」、と小川社長は話す。今は各企業から出た廃棄物を自社工場まで持ってきて、そこで再資源化しているが、これを各企業の工場でできるよう技術提供をしたいのだという。日本の技術力は進んでいるということをどんどん世に広めたいと小川社長は言う。
インタビュアーから
産業廃棄物と言えば目にする機会があるのが、解体現場からでるコンクリート片で、その後、廃棄物がどうなるのか想像したこともありませんでした。今回のインタビューで、産業廃棄物には多くの種類があること、そして、再資源化でき、地球の有限の資源の枯渇の延命につながる地球にとってとても意味のある、大きな仕事をされているんだと、感動しました。