仕事図鑑は岡山にある会社をインタビューし、これから就職を考える学生、社会人に仕事の魅力を届ける情報サイトです。知らない会社、仕事が見つかるだけではなく、知っている会社、仕事にも新たな発見があるサイトです。
菅公学生服株式会社という会社
菅公学生服は、学生服と体操服を企画から製造、販売まで行っている。自社ブランドの「KANKO」をはじめ「ELLE ECOLE」、「MICHEL KLEIN Scolaire」、「KANKO Produced by BEAMS design」、「adidas」、「Reebok」、「KANKO×phiten」といった、幅広いブランドの制服や体操服を取り扱う。また、学生服と体操服というイメージが強いが、介護ユニホームや企業ユニホーム、小学生向けの学生服・体操服も扱っているグル―プ会社もある。
学生服産業とは
一般アパレルメーカーであれば、流行のものを素早く取り入れようという意識から都心に本社を置いているところが多いが、学生服は流行というより、それぞれの地域に合ったものを提案するということが重要となってくる。そのため、菅公学生服は営業拠点を全国に30ヶ所ほど設置し、それぞれの地域のニーズに素早く応えられるように取り組んでいる。
学生服を新しく作るときは、学校側の要望を聞きながら、その学校らしさを最大限に表現できる学生服を作り上げていくそうだ。なぜなら、周辺環境などの地域の特色、またスクールカラーや校訓といった学校の特徴など幅広い視点で多くの情報を集め、その学校に合った学生服を作り上げていくからだ。例えば、地域の特色の面で考えてみると寒い地域の北海道は保温性の優れているもの、暑い地域の沖縄だと通気性がいいものが求められるように、それぞれの地域で求められるものがかなり違うことが分かる。


学生服業界は入学式までに全生徒に学生服を必ずお届けするという社会的使命があるため入学シーズンが最大の繁忙期である。入学シーズンに向けて普段から国内に4工場ある基幹工場と14工場ある衛星工場で、学生服を製造している。営業や開発は、モデルチェンジの提案であったり、既存校には着崩しに困っていないか、商品に問題はないかなどのアフターフォローであったり、展示会を開いたりと、全国の学校へのPRもかかさない。
菅公学生服にとっての学生服
▲実験の様子
「学生服には魅力があり、一般衣料とは別物である」と安井さんは考えている。というのも、学生服とは入学から卒業まで子ども達に寄り添い、子ども達の成長を支えられるものであるからだ。長く子ども達のそばにいられるように、菅公学生服は「学生工学」という考えを持っている。着用者の満足のために、着用者自身の心身の変化や学生を取り巻く時代や学びの変化を研究している活動のことだ。例えば、着用実験で他社の制服と自社の制服を着比べて、学校でよくある、机で勉強する姿勢の時に、圧迫されている部分を調べ、負担がかかる部分には伸縮性がある生地を使用するなど、学生服を着る生徒を第一に考え、日々研究をしている。

営業にとって、先生に顔を覚えていただくことは非常に重要であるが、先生と会う機会がなかなか作れずPRのチャンスを得られないということがあったそうだ。そのような時には、先生の時間割を把握したり、先生と共通のサークルに入ったり、自分を紹介する新聞をつくってアピールするなど、売手と買手というビジネスの関係にとどまらず、1人の人間として距離を縮める努力をしたそうだ。また、繁忙期には、工場の生産が追い付かず、生徒に学生服を渡せなくなりそうな時があった。しかし、必ず入学式に間に合うように、車で工場まで受け取りに行き、生徒に直接届けたこともあったそうだ。子供たちの晴れ舞台のために学生服を必ずお届けするという責任感を菅公学生服の全社員が持っているからこそお届けするためには手段を選ばない。常に生徒のことを思い、影で努力をしていたからこそ、仕事の喜びも大きい。自分が提案して学生服や体操服が採用された学校から「この制服(体操服)に決めてよかった」という言葉をもらった時や、その商品を着ている子ども達を見たときに大きなやりがいを感じるそうだ。
学生服の着崩し
▲カーブベルト
着崩しについては多くの人に心当たりがあることだろう。学生服とはそもそも集団を位置づけ、この学生服だから、この学校だな、という風にわかるものだ。その集団のなかで、一人だけ着崩していると、それを見た人は、その生徒ではなく学校全体がだらしないと感じる。個人だけの問題ではなくて、周りにも影響してしまう。また、着崩しをすることによって見た目だけで判断され、悪い印象を与えてしまうこともある。例えば面接でどれだけ完璧に面接を終えても、見た目の第一印象が悪ければ、残念な結果になることもある。このようにその人の本質ではなく見た目の第一印象で判断されてしまうことは全体としても個人としても、「もったいない」ことだと安井さんは言う。

そのため菅公学生服では正しい着方を伝える着こなしセミナーを行っている。着こなしセミナーは学生だけでなく、どのように着崩しを注意していけばいいかわからない先生方にも人気だそうだ。
裾に校章の入ったスカート
セミナー以外でも、商品自体に着崩し防止のための工夫も施している。例えばスカートを折り曲げにくいように、腰部分にカーブベルトという波打った形のベルトをいれたり、短く切れないようにスカートの下部分に校章を入れたりしている。

なぜこれほどまで対策をするのだろうか。もちろん学校からの要望も多いのだろうが、子ども達のことを第一に考えて作った制服が、正しく最高の形で機能するように、という菅公学生服の想いがそこにはある。
選ばれる理由
ドリームマップ授業
菅公学生服の制服が選ばれる理由の1つとして、品質が高いということがある。菅公学生服は自社生産比率が約90%で、ほぼ自社で制服・体操服を生産しているので、外部委託ではなかなかできない部分や細部にもこだわることができ、品質の高いものがお客様に届けられるのだ。

もう1つは、ソリューション活動。商品を届けるだけではなかなか選んでもらえないだけではなく、既存のお客様を維持することが難しい。そこで、ソリューション活動として、菅公学生服の社員が小学校に出張し、先生の代わりに授業をする、という、取り組みを行っている。例えば子どもに将来なりたい自分の姿をイメージしてもらい、写真や文字で表していくドリームマップ授業という教育支援がある。将来の夢や、仕事を描き、宣言することで、主体的に生きる力を身に着けられる。

またほかに、ダンス授業支援も行っている。平成24年から、中学校体育でダンスが必修になったことを受け、独自に作成した「カンコ―くるくるダンス」を使った学校教材の開発や、発表の機会としてダンスコンテストを実施して、学校のダンス授業を支援している。

品質の高さとソリューション活動を通して築きあげた学校との信頼関係が多くの学校・生徒に選ばれる理由になっていると考えているそうだ。
仕事をする上で大切なこと
菅公学生服で大切にしている姿勢は、挑戦、チャレンジすることだ。安井さんは新入社員研修を4,5月と経て、6月に配属となったばかりで高卒採用やインターンシップを一担当者として任されるなど、入社直後から大きな仕事を任され、挑戦の連続だと言う。また開発本部に配属された人は、大規模の展示会で、全国から来場した学校の先生方にモデルチェンジの提案や今後の見通しなどのプレゼンを1人でするよう任されることもあったという。
このように菅公学生服では若手のうちから大きな仕事に挑戦できる。主体的に行動したいと感じている人には絶好の会社だ。「若手のうちから挑戦できる環境が整っているため、菅公学生服には成長できるチャンスがたくさんある。私は今後も自己成長のため、そして会社の成長のため挑戦し続けたい。」と安井さんは言う。この挑戦する姿勢が、学生服業界トップを走り続けている原動力となっているのだろう。
課題・展望
少子化について尋ねてみると、学生服業界にとっては大きな問題であるが、シェアの拡大を図ることで対策をしようとしているそうだ。菅公は学生服業界トップシェアだが、割合としては全体の25%となっており、未開拓の75%がある。学生服で言うと、菅公学生服25%、トンボ20%、明石被服16%、瀧本8%と、大手が7割を占めている。体操服に関して言えば、これは今、他社と比べても、菅公学生服は圧倒的にシェアが高い。
菅公学生服の今後は学生服・体操服のシェア拡大を目指すため、新たに挑戦し続ける。新しいものや、その時代に合ったものを作り上げていくためには、守りに入ってはいけない。
ブランディングを強化し、学生服といえば菅公学生服と皆様から言っていただけるようになることが今後の課題だそうだ。
インタビュアーより
学生服を通して、学校での楽しいこと、辛いこと、嬉しい事、様々な場面に寄り添い、いつも近くで応援し続けられるような存在でいたいという、常に子ども達を思う気持ちを感じました。制服を見る度に、たくさんの思い出が浮かぶのは、菅公学生服の人達の思いに包まれていたからなのだと気づきました。子ども達と共にチャレンジと成長を続ける菅公学生服を知ることができて嬉しかったです。